移民問題と欧州連合の動き

なかなか・・・・メモ

ただ、移民はもっとやってくる。東欧との不調和、市民が移民にうんざりしている世論のなか、先行きは不透明である。

今年に入ってから、200以上の難民センターで放火


http://euandjapan.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
移民問題と欧州連合の動き
無沙汰してすみません。
忙殺されてました。
この記事は、前回の記事とだぶる部分がありますが、よろしかったら読んでくださいね。
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すさまじい数の移民である。今年欧州に到着した移民は、8月末の時点で認知されているだけで50万人。ルクセンブルクの人口40万人より多い。去年は1年間で28万人だった。「歴史で習った○×民族の大移動とはこういう感じだったのか」と思えるほどのすごさである。

この危機は、危機のような「カネ」の問題とは全然違う。自分の戸口に、家がなくお腹を減らしている人間が大量にやってくるのだ。各人間の本性が試される出来事なのだ。日ごろは隠れて見えにくい感情もあらわに見え、欧州では映画など追いつかない壮大な人間ドラマが展開している。


驚くべきドイツとの反応


まず最初に驚かされたのは、ドイツ人の反応だ。

メルケル首相は、ドイツは開かれている国で、ヒューマニストの顔をもっているとのを発して、80万人の移民受け入れを表明した。8月下旬には難民を訪れ、「他者の尊厳に疑問を投げかける人たち、救助を求めている人たちを助けない人たちには、許容の姿勢はない」と言って、極右の動きをけん制した。今年に入ってから、200以上の難民センターで放火が起きているのだ。

このころ、欧州では「ドイツは移民に温かい人間的な国」というイメージが氾濫していた。オーストリアを超えてドイツの南部ミュンヘン駅に到着した移民たちに、拍手をもって迎えるドイツ人たち。さすがに拍手には驚かされた。世論調査では、ドイツ人の6割以上が「助けを求める人に何らかの受け入れ措置をするべき」答えたし、女の裸が一面に載る大衆日刊紙「ビルド」は、一面で「難民を援助」と訴えた。サッカーのスタジアムでは、「移民を歓迎します」という幕があちこちで張られた。移民慣れしているフランスから見ると、ちょっと異様な光景だった。

ドイツ人は、嬉しかったのだと思う。移民たちは「ドイツ!ドイツ!」と、ドイツがエルドラドであるかのように叫んでいる。欧州の中で、ドイツは何かというとナチスの非道を持ち出されて責められる。この大国を恐れる周辺国にとって、歴史問題はカードになりうる。ついこの前の危機のときも、チプラス首相はドイツ等の借金取立人のような態度に怒り、ナチスによるギリシャ占領時代の補償を計1730億ユーロを要求した。
そこへ、自分たちの文明の祖といえるメソポタミア地域から、ドイツに憧れてはるばるやってくる人々が登場したのだ。いかにドイツ人が嬉しかったか。キリスト教の贖罪の思想もあいまって、あふれんばかりの好意が注がれたのも無理はないと思う。「良い顔見せるのに必死」と言うフランス人のセリフは皮肉すぎるとしても、自分たちドイツ人がナチスのイメージのような人間ではないと見せるチャンスだった側面はあったかもしれない。

しかし9月13日、ドイツ政府の態度は豹変した。オーストリアとの国境を管理しはじめたのだ。続いて、チェコ、スロバキア、オーストリアも同様の措置をとった。14日には、ハンガリーが非EU加盟国であるセルビアとの国境を完全閉鎖、囚人まで使って4メートルの壁を大至急で構築した。

ドイツ政府の「豹変」については、批判的な声は少ない。逆に、「メルケル首相のせいで移民が大量にやってきた。謝罪しろ」という声が上がる事態となっている。首相はブリュッセルで「もし緊急事態に、難民に優しい顔を見せたことについて、私たちが謝罪を始めなければならないとしたら、そんな国は私の国ではない」と珍しく感情的に応酬した。

次に驚かされたのは、フランス政府の反応だ。

ハンガリーの壁の構築に対して、政治家が表立って批判したのはフランスだ。ファビウス仏外相は「壁の建設はスキャンダルだ」と発言したために、ハンガリーとの外交関係が悪化した。ハンガリー外相は「この措置はEUとシェンゲン協定を守るためのものだ。何がいけないのだ」と反発している。壁は必要なはずなのに、なぜ批判するのか。

彼らが左派だからである。現フランス政権は社会党である。左派が守るのは、人間の権利と良心である。批判を理解するには、欧州人の心の痛みを理解しなくてはならない。かつて鉄のという壁が欧州大陸を二つに分断した。壁のために多くの人が殺された。ハンガリー動乱、チェコの「プラハの春」の軍による弾圧は言うに及ばないだろう。壁は家族を分断し、乗り越えようとする者は射殺された。壁はいかに人間を苦しめるか、壁が崩壊して自由を手に入れていかに嬉しかったか、当事者の欧州大陸人が一番よくわかっている。だからこそ東欧を吸収して、自由と平和のために欧州連合を建設したはずだった。それなのにまた壁をつくったのだ。かつて壁に苦しめられた人間が壁をつくる。たとえ政権の支持率が低くなろうとも、「欧州の価値観と人権に反する」と批判しなくてはいけない。自らの思想の根本が問われるからだ。

政治家だけではなく、ジャーナリストの役割にも目を向けるべきだろう。国境を越えて連帯している欧州の左派メディアたち。やってくる移民の悲惨な状況は、The Migrants というコンソーシアムのサイトで見ることができる。彼らは今後、欧州で台頭しはじめている極右やネオナチに対抗して、人間を守るために戦わなければならないのだ。


タッグを組むドイツ・フランスと欧州委員会


そして、EUの舞台はどうか。ユーロ危機の次は移民危機、大変だと同情的になっていたが、そんなことはないかもしれない。危機をばねにして、EUはどんどん強化される可能性さえ出てきたと感じて驚いている。それほどの激動である。

日本では欧州の不調和ばかりが強調される傾向があるが、9月以降―――正確には、トルコの海岸にたどりついたシリア人男の子の遺体のが、イギリス発で欧州中、アメリカにもどっと流れた事件のあと―――の推移を見ていると、大筋ではメルケル首相、オランド大統領、ユンケル欧州委員会委員長はうまく連携して事を運んでいる印象を受ける。9月23日に大幅に前倒しで開かれた緊急会議では、各国で人数を割り当てて12万人を受け入れるという案が多数決で決められた。前の会議からたったの9日しかたっていない。見事なお手並みである。ユンケル委員会は大変有能だ。そして今は、独仏首脳はシェンゲン協定の精神を守る姿勢である。この3者がタッグを組むととても強い(この流れに一番危機感をもっているのは英国だろう)。

シェンゲン協定はどうなるのか。今の国境検査は合法である。「重大な危機の場合は、30日間国境のコントロールを置くことができる」と規則にあるからだ。前例もある。このために急いでいるのもあるだろうが、30日で解決できるのだろうか。サルコジ前大統領は、次期大統領の座をにらみながら、また「シェンゲン2」を提案しだしているが。

ユンケル委員会は、EU共通の陸の国境管理や警察の創設を計画しながら、現地に視察団をした。このような「今後同じ問題が起きても速やかに対処できるよう、恒久的で義務であるメカニズムを構築」は難しい。国家主権の問題にからだ。でもすでに、海の管理機関であるFRONTEXという組織は存在する。緊急事態ということで、合意はなされるかもしれない。実現すれば、EU軍を創設する案をもっているユンケル委員会にとって大きな一歩となりうる。

ただ、移民はもっとやってくる。東欧との不調和、市民が移民にうんざりしている世論のなか、先行きは不透明である。しかしEUが変わるターニングポイントになるのは間違いない。日本に与える影響は必至である。


「文明の転換期」に生きる


それにしても移民はどこからやってくるのか。今現在はシリアとイラク難民が半数以上と言われるが、去年は4分の1に過ぎなかった。欧州大陸の外からは、アフガニスタン人、パキスタン人、リビア人、エリトリア人、ソマリア人、マリ人など様々だ。彼らの多くはイスラム教徒である。特に2010年、チュニジアのジャスミン革命から始まった、イスラム世界での民主化の動き「アラブの春」が起きてからというもの増加の一途をたどり、欧州ではかなり前から問題になっていた。

世界はなんと変わったことか。ルネサンス以前の時代は、東ローマ帝国をのぞけば、文明はイスラムが先進世界だった。いま、移民たちは、アラブの春のときと同じように、「自由を!自由を!」と叫んでいる。一人の人間として政治的自由を獲得するというのは、欧州でうまれた人権思想である。彼らの考え方は欧米化してきている。

手を伸ばせば届きそうなところにある欧州が21世紀にいるのに、スマホを手にしながら彼らだけ旧態依然とした政治体制や思想にとどまることは不可能なのだ。アメリカの国際政治学者ハンチントンは「文明の対立」といった。しかし、この考えは近視眼的ではなかったか。私たちが今見ているのは、7世紀に誕生して以来、1000年以上にわたって中東と北アフリカを支配した、イスラム世界という大文明の黄昏ではないのだろうか。私たちは今、文明の大転換期に生きているのだと思う。そして、民族や宗教を超えて人間の権利とはどうあるべきかが改めて強く問われることになるだろう。この問いと時代のうねりは、私たち日本人にとっても遠い世界の出来事ではないはずだ。

2015-10-02 05:53

テーマ:今日の独り言 - ジャンル:写真

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